『青空の下、血桜咲く』〜ある高校生の革命記録〜

プロローグ

中学の卒業試験が終わって、長い長い二ヶ月の夏休みがやっと終わった。

そして——私は晴れて桜之城(さくらのしろ)付属高校の一年生になっていた。

この「小緑(しょうりょく)」って呼ばれる制服、なんかまだ体に馴染まない。青みがかった緑色のブレザー。先輩たちが着てるのを見ると可愛いと思うんだけど、いざ自分が着ると、なんかよそよそしい。

それでも、胸を弾ませながら高一・一組の扉を開けた。

窓の外には青々とした銀杏の葉っぱ。風が吹くたびにざわざわと揺れて、なんだかこっちに手を振ってるみたいだ。池の鯉たちも元気に泳いでる。水面に跳ねるしぶきが、太陽の光できらきら光ってた。

ここはまるで小さな公園だ。中学とは比べ物にならないくらい、緑が多くて、のびのびしてる。しかも——制服すら強制されない。この学校は、私服で通っていいんだ。

「自由」——そういう言葉が、一番しっくりくる場所だった。

高校生活は想像以上に忙しかった。でも、それがなぜか心地よかった。綾瀬晴夏(あやせ はるか)と校庭をぐるっと一回りしたあの日までは——

そう。あの日までは、何もかもが普通だった。

 

第一章:異変

「はい、じゃあ学案(がくあん)を開けて。昨日の宿題、解説するよ」

先生の声が教室に広がる。ホワイトボードには問題がでかでかと映し出されている。みんな俯いて、ペンを走らせてる。カリカリ、カリカリ——鉛筆の音だけが教室に満ちてた。

その瞬間。

「あ——た、助けて…」

斜め前の席に座る神田星奈(かんだ せいな)が、苦しそうに声を絞り出した。

顔色が、みるみるうちに青ざめていく。唇は紫色——いや、もう少し濃い、あの、なんだろう、ぶどう色みたいな——とにかく、人間の顔色じゃなかった。

そして、彼女は机の上に吐いた。

私は反射的に立ち上がって、隣の席の親友・星野恋(ほしの こい)のところへ逃げ込んだ。恋も真っ青な顔で、震える手で私の腕を掴んでた。

先生はすぐに立ち上がった。

「全員、静かに! 落ち着いて移動するよ!」

クラス中がどよめいた。数人の女子が悲鳴をあげて、椅子を倒しながら後ろに下がる。先生の指示で、私たちは隣の空き教室へ避難した。

星奈は保健室の先生に連れられて、そのままどこかへ——おそらく病院へ——運ばれていった。

 

休み時間。

廊下で、隣のクラスの晴夏とばったり会った。

「え、なに? あんたたちも教室移動したん?」

晴夏は声を潜めて、こっちに寄ってくる。彼女のクラスは、まだいつも通りの場所で授業を受けてるらしい。

「まさか、あんたのクラスでも吐いた人出た? 食中毒とか?」

私は額の汗を拭いながら、小さく頷いた。

「うん…めっちゃ怖かった。あんなの、見たことなかったよ。ただの食あたりだといいんだけど…」

晴夏は「そうだね…」とだけ言って、なんとなく遠くを見た。その目が、いつもよりちょっと曇ってたのを覚えてる。

 

放課後。

昇降口で靴を履き替えていると、晴夏が後ろから声をかけてきた。

「ねえ、これ見て」

彼女が差し出したスマホの画面には、ニュース記事が表示されてた。

「桜之城の複数の高校で、生徒に同様の症状が続出。血液検査の結果、未知のウイルスが検出。外部からの侵入の可能性も」

「…これ、さっき出たばっかのニュースだよ」

晴夏の声は、なぜか少し震えてた。

私は何も言えなかった。ただ、薄黄色く染まった空を見上げて、それからバス停へ向かって歩いた。バスに揺られながら、窓の外の街並みがいつもと同じように流れていくのを、ぼんやりと眺めてた。

 

不安な日々が数日続いた。

テレビをつければ、どこも同じようなニュースばかり。SNSには、あちこちの学校で似た症状が出たという書き込みが溢れてた。デマもたくさん流れてて、何が本当で何が嘘なのか、全然わからなかった。

そして——ついに、明確な結果が出た。

そのウイルスは敵国による細菌戦の産物だった。接触や血液で感染する。感染力は桁外れで、一度感染すれば、現時点では治療法が存在しない。感染者は強制隔離される。それだけが、唯一の対策だった。

学校では毎週、専用の検査機で感染率を測定することになった。50%以下なら「半感染」——いわゆるキャリア状態で、見た目は健康でも他人に感染させる可能性がある。それを超えると発症し、80%近くになると致死率が跳ね上がる。

「治療法ができるまで、みんなで気をつけて乗り切ろう」

先生はそう言った。でも、その声には力がなかった。

 

数週間が経った。

ある日、昼食が終わったころ、担任の先生が教室に飛び込んできた。いつもより早足で、いつもより少しだけ、興奮したように。

「感染した生徒たちは、これから訓練を受けることになりました」

教室が一瞬で静まり返った。

「彼らは前線で敵と戦い、この国のために命を懸けます。本当に——偉大なことです。彼らには賛歌を捧げるべきでしょう」

誰も何も言わなかった。

「皆さんも、毎日のお昼の時間に彼らへ手紙を書いてください。このポストに入れれば、届けられます。きっと彼らの力になります」

先生は教室の隅に置かれたポストを指さした。木製の、ちょっと古びたポストだ。その前には、すでに数枚の封筒が置かれていた。

私たちはオレンジ色の空の下、一筆一筆、手紙を書いた。あの手紙が、鳩のように彼らのもとへ飛んでいく姿を想像しながら。

——彼らが、無事でありますように。

そう願うことしか、できなかった。

 

第二章:影

あれからまた数週間。

街の様子が、少しずつ変わっていった。

薬局の前には長い行列ができた。スーパーからは消毒液が消えた。学校でも、マスクをしている生徒が増えた。笑い声が減った、と言うべきかもしれない。

そして——政府が「妥協・不抵抗政策」を掲げたとき、街は二つに割れた。

改革派。山田杏子(やまだ きょうこ)が率いる、穏健な対話路線。彼女は廊下にビラを貼って、静かに呼びかけていた。

「私たちの声が届けば、政府は動く。手紙を書きましょう。お願いします」

その声は優しくて、誠実だった。

もう一つは革命派。牧野詩羽(まきの うたは)が掲げる、武力による打倒路線。彼女はあまり表に出なかった。でも、その影にはいつも何人かの生徒がついていた。何かを話し込んで、うなずき合って——そして、それぞれの方向へ散っていく。

私は最初、改革派に共感した。

誰も死なせたくない。それだけが、私のすべてだった。

でも——

 

ある夜、私はとある「基地」の内部を撮影した動画を目にした。

壁にこびりついた血痕。床に倒れた遺体。刺されたような傷跡。そして——それらの人々の体に、感染の痕跡はなかった。

施設は収容所だった。そして感染者は——戦力外と判断されれば、その場で屠殺される。ただそれだけの場所だった。

あの信じていた「賛歌」は、嘘だった。

 

私は詩羽を呼び出した。

美術室の、誰もいない夕方。窓の外は紫色に染まっていた。

スマホの画面を彼女に見せる。彼女は動画を最後まで見て、それからゆっくりと息を吐いた。

「これは…革命しかない」

その声は、驚くほど静かだった。でも、その瞳の奥には——確かに、決意の火が灯っていた。

 

第三章:十六歳の光

十二月。

窓の外の空気は冷たくて、吐く息は白く染まった。でも、その寒さがウイルスの拡散を一時的に食い止めているらしい。薬物開発チームの話では、このウイルスは低温下では活性を失うんだそうだ。

高一・一組の終礼のチャイムがまだ鳴り終わらないうちに、晴夏と私は雨空の両腕をがっちり掴んだ。

「担任のとこ! 急用!」

晴夏の声はやけに張り切ってて、なんだかわざとらしかった。雨空は「え?」って顔で、半ば引きずられるように廊下を歩く。

夕日が斜めに差し込む廊下は、彼女が何度もレモンティーを届けたはずの見慣れた場所なのに、なぜか今日はひどくよそよそしい。

職員室のドアを開けると——誰もいない。

机の上に、メモ用紙が一枚。風にそっと揺れてる。

走り書きでこうあった。

「急いで教室に戻れ!」

雨空は困惑しながらも、その紙を握りしめて教室に駆け戻った。私たちはその後ろを、息を殺してついていく。

教室のドアの前。中は真っ暗で、深海みたいに静かだ。迷いながら、彼女はドアを押し開ける——

「お——誕——生——日——おめでと——!」

パッと灯りがついて、大歓声が炸裂した。

教室の机はくっつけ合わされて、大きなテーブルになっていた。その上にはお菓子が山盛り。中でも一番目を引くのは、一箱まるごとの冷えたレモンティー。ペットボトルの表面にびっしりついた水滴が、照明の下でキラキラ光って、まるで無数の星みたいだった。

黒板は、私の力作だ。色チョークででかでかと描かれたバースデーケーキの横に、こう書いてある。

「結城雨空様 お誕生日万歳!」

雨空はドアのところで立ち止まったまま、固まってる。その顔に浮かんだ驚きと照れと——そして、ちょっとだけ潤んだ目を、私は忘れない。

「何探してんの、今日の主役! 今日は受け取るだけでいいの!」

前列の席の、ふだんあまり話さない女の子が、缶のレモンティーを差し出す。雨空はそれを受け取りながら、小さく「ありがとう」って言った。

「前にアイスティーくれたお返し。私の好きな青梅緑茶、あげるね!」

私は大きなペットボトルを雨空の手に押し込んだ。青梅の香りがほんのりと、手のひらに残った。そして——千字は軽く超えたであろう手書きの手紙も、彼女に渡した。

「電気消して! ろうそく!」

晴夏が騒ぐ。誰かがスイッチを切った。

真っ暗になった教室に、十六本の炎だけが浮かんだ。ケーキの上のろうそくの火が、ゆらゆらと揺れて、みんなの若い顔を照らし出す。

「早く願い事!」「そうそう!」

雨空は目を閉じた。まつげが炎の明かりに、細かい影を落としている。

その瞬間、私は思った——願いって、何かを乞うことじゃないんだな。今、この瞬間を、しっかり掴むことなんだ。

「吹け! 吹け!」

掛け声に、彼女は大きく息を吸い込んで、思い切り吹き消した。

十六の火が、一瞬で消えた。

歓声と拍手が教室を満たす。

 

灯りがついたとき、後ろの壁に貼られた「フローリングレッドフラッグ」の下に、一枚の新しい掲示物が加わっていた。

「一組の光 お誕生日おめでとう」

その中心には、クラス全員のサインで囲まれた「16」。

そう、壁までもが、祝福の味方だったんだ。

 

ケーキを食べて、レモンティーを飲んで、わいわい騒ぐ。晴夏が私の鼻の頭にクリームを塗って、みんなが笑った。冷たい感触が、なぜかやけに暖かくて。

雨空はグラスを手に、教室を見渡してた。その目が少し潤んでるのは、きっと気のせいじゃない。

——そうか。この賑わいは、虚ろなこだまじゃない。彼女が今まで静かに届けてきた小さな優しさが、時を経て、こうして返ってきてるんだ。

この教室も。この仲間も。この冷えたペットボトルの水滴も。後ろの壁の掲示物も。全部が、言葉はいらない勲章になって、彼女の十六歳の胸にそっと置かれた。

ああ、そうか——最も大きな贈り物って、与えられるモノじゃない。

自分自身が、確かにこの場所にいるって認められること。

それが、たぶん——いちばんの幸せなんだ。

 

第四章:決断

その夜、詩羽が影から現れた。

「内鬼(スパイ)がいる」

その言葉が、教室の空気を一瞬で凍らせた。

「資料が漏れた。地下チームが危ない。場所が、もうバレてる可能性がある」

雨空の顔が引き締まる。彼女は私と晴夏に向き直って、短く言った。

「帰って。今日はもう。明日、緊急集会」

彼女は最後に、黒板の「16」を一瞥してから、詩羽の後ろ姿を追って廊下に消えた。

あの温かい光の余韻が、冷たい現実にゆっくりと飲み込まれていく。

 

第五章:革命の夜明け

革命派は地下に潜み、着々と勢力を拡大していた。

私は動画編集を担当した。雨空はビラ制作。詩羽は作戦指揮。晴夏と恋は前線で戦っていた。私たちは、一人ひとりができることをやった。それだけだった。

ある日——雨空が放送塔に駆け上がった。

彼女はマイクの前で深呼吸を一つ。そして、宣言した。

「桜之城の市民よ、聞け」

「奴らはこの街を喰い物にし、未来を奪い、命をゴミのように扱ってきた」

「でも、もう終わりだ。私たちは、ここに革命を宣言する」

「声を上げよ。立ち上がれ。自由は——与えられるものじゃない。勝ち取るものだ」

その声は、街中に響き渡った。

街が動き出した。市民が走り出した。旧政府の施設が次々と炎上する。

私は地下道を詩羽と共に進んでいた。頭上では銃声と爆発音が絶え間なく響く。でも——怖くなかった。だって、雨空の声が、あそこから街を導いている。

彼女の声は、いつだってそうだった。

あの日、教室で「ごみを捨てないでください」と注意したときも。あの日、みんなに飲み物を配ったときも。彼女はいつも、正しいと思うことを、まっすぐに言葉にしていた。

それが、彼女の強さだった。

 

第六章:内鬼の真実

あの日、杏子が詩羽の前に立った。

彼女は震える手で、黒い手帳を差し出した。

「…私が、内鬼です」

声が、震えてた。

「改革派として、革命を壊そうと…でも…違った。私は、間違ってた」

詩羽はしばらく彼女を見つめてから、ゆっくりと近づいた。そして——静かに彼女を抱きしめた。

「わかってる」

詩羽の声は、やけに優しかった。

「あなたは誰も死なせたくなかっただけだ」

杏子の涙が、ぽたぽたと手帳に落ちた。

そうだった。彼女もまた、この街を想っていたんだ。ただ——その方法が、違っただけ。

 

第七章:第七区総攻撃

最後の拠点。第七区(だいななく)。

高くそびえる壁、無数の銃座。ここが旧政府の最後の牙城だった。

「行くよ!」

詩羽の号令で、一斉に突入した。

爆発音。銃声。崩れ落ちる壁。瓦礫の舞う中を、私たちは走った。

そして——空一面に舞い上がったのは、あの手紙たち。私たちが書いた、あの賛歌の手紙。炎に巻かれ、血に染まりながらも、それでも空へ舞い上がっていく。

あの信紙は、鳥じゃなかった。

飛び立つことを選んだ、翼そのものだったんだ。

轟音と共に、第七区の主塔が崩れ落ちた。

解放された人々が、瓦礫の間から次々と這い出てくる。泣きながら、叫びながら、それでも——空を見上げている。

 

第八章:新たな朝

薬物は開発に成功した。

感染者たちは、少しずつ救われていった。完全に元通りってわけじゃない。でも——少なくとも、明日への希望は戻ってきた。

しかし、その直後——

警報が鳴り響いた。

敵国空軍の大編隊が、接近している。

「防空陣地! 構え!」

詩羽の声が響く。

空が、爆炎で染まった。防空砲が火を噴き、敵機が次々と墜ちていく。それでも、街に爆弾が落ちる。

私と雨空は掩体壕(えんたいごう)に身を寄せていた。彼女の手は冷たかったけど、握る力は強かった。

「——勝つよ、りな」

彼女は静かに言った。

「だって、私たちはここにいる。生きてる。それだけで、もう負けてない」

 

空襲が去った。

街は傷ついたけど、立っていた。

あの第七区から舞い上がった手紙たちが、今度は瓦礫の上に降り積もって——まるで雪のように、街を優しく包んでいた。

 

エピローグ

春が来た。

学校が再開した。教室にはまた、笑い声が戻ってる。

雨空は今日も、でかい段ボール箱を抱えて教室に入ってきた。

「はい! 新学期祝い!」

あの日と同じように、彼女はレモンティーを配り始める。みんなで「ありがとう」って言いながら、一本ずつ受け取ってる。その光景が、なんだかとても懐かしかった。

私は窓辺でスケッチブックを開いてた。鉛筆を走らせる。青い空。銀杏の葉。そして——笑う雨空の横顔。

ふと、後ろの壁を見上げる。

あの「一組の光」の掲示物は、まだ貼ってある。名前の横に、みんなのサイン。あの日から、誰一人欠けてない。

杏子もいる。晴夏も恋も詩羽も。そして——雨空も。

私はそのページに、小さく一文字書き足した。

「明日。」

そう——私たちの明日は、きっと、ずっと晴れる。

 

(おわり)

突然觉得领土战争那一篇我是按照日漫的那种风格去写的,于是想到了要不要翻译成日语看起来更契合故事,翻译软件+AI润色核对自己慢慢翻出来的一篇,算是某种意义上的重写了,碍于日语水平有限,所以比对了好久怎么翻译看起来顺畅一些

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